私子 私
盗子 

大学に「彼氏横取り女」として有名なかわいこちゃん(盗子)がいた。
盗子と授業が一緒になり仲良くなった。
盗子はどろどろとした噂と違い、とても素直で感じのいい子。
ふわふわほんわかしてるんだけど、ちゃんとしっかりしてる礼儀正しい子。
可愛いしモテるから嫉妬で嘘の噂流されてんだな可哀相と思った。

盗子を信用しきってた私子は彼氏を紹介した。
その日から三日と立たずに彼氏に別れを切り出された。
「別れてくれ」としか言わない彼氏に詰め寄り、理由を聞き出したら、
「好きな子ができたから」

今までなかった女の勘が働いて「もしかして盗子?」と恐る恐る聞くと、
彼氏は「盗子は悪くない!盗子を逆恨みするなよ?あの子は繊細なんだ…」

盗子の噂は本当だった。


盗子と何かあった感じなのに、問い詰めても彼氏はそれ以上何も言わなかった。
その日の内に盗子を呼び出して聞き出すと「ごめん、ごめんね」と泣き出した。
「私はそんなつもりなかったの、でも彼氏君が盗子が好きって…
でも私は恋人いるから付き合えないってちゃんと断ったんだよ?」
涙ながらに訴えてくる盗子に引き込まれて何も言えなくなる私子。
「そっか私もごめん、彼氏には私から言っておくから…盗子は悪くないよ」
「ごめんね私子…」
私子が盗子から体ごとそらして盗子と真逆の方を見ていたとき、
鏡とガラスの反射で盗子の顔が見えた。
盗子は私子に見えない位置だからか、
にやーと馬鹿にしたようにほくそ笑んでいた。
普段はからからと無邪気にわらいころげたりふんわりと優しく微笑む盗子からは
想像もつかない嫌な笑い方。

凍り付く私子に気付かずクスンクスンとかわいらしい泣き声だけ出す盗子。
表情だけは醜いニヤニヤ笑いのままで。
私子が瞬きを繰り返して見つめ直しても、盗子の表情は変わらず。

噂は本当だったんだ。こいつ友達の彼氏盗るのが好きな女なんだ。
状況を把握したら怒りがわいてきた。

その場では盗子を抱きしめなぐさめて終わった


私子はまず情報収集することにした。
水面下で盗子被害者とも話し合った。

ある日喪男が話し掛けてきた。
喪男は私子にまず話し掛けてきたが、狙いは盗子だったらしく、
盗子が私子に近寄ると盗子がん見で私子を無視。
踏み台扱いに傷ついたが使えるなと思い、盗子が彼氏と別れたタイミングを見計
らって盗子に相談。

「喪男君のことが気になっててさ」
盗子は「応援してるよ」と口では言っていたが、
次の日喪男から「わかってると思うけど僕は盗子ちゃんが好きだから」
そして付き合う二人。
その時も盗子は涙の謝罪。
「盗子ちゃんは悪くないよ。僕は最初から盗子ちゃんが好きだったから…!」
「喪男くぅん…」
熱い抱擁。

喪男はキモメンデブでビジュアル的に美女と野獣。
きったないもん見ちゃったなーと思いつつ、
人の(欲しがる)ものなら何でもいい盗子に感心した。
そのくらい喪男はキモいタイプの不細工だった。

絶妙なタイミングで惚気話や誤爆メールを繰り出す盗子。
本当に好きな人だったらどんなに傷ついただろうかと思うが、私子ノーダメージ

盗子があんなキモいのとイチャイチャしてると思うと爆笑だった。
私子が事前に「好きな人の初めてって嬉しいよね」と根回ししてたので、盗子は
喪男と寝た。
盗子はそのことを悪気のなさそうな感じで私子に報告してきた。
内心大爆笑だったが、わざと悔しさを押し殺した感じで祝福してあげた。
私子の演技に満足したのか、盗子は本当に楽しそうだった。

そして盗子がムカつきそうな対象を見つけた。
私子盗子喪男の三人でランチしていたときに見かけた美人さん。
「あの人確かミスコン辞退したんだっけ?綺麗だねえ」と盗子に話をふると、
「うん」とうなずくも目をぎらつかせていた。
私子に見せ付けるために喪男といちゃついて先ほどまでは上機嫌だった盗子。
苛立ちを隠してはいたが、目が笑ってなかった。

美人さは盗子のちょい上くらい。
でも盗子が頑張ってもその人には追い付けなさそうな、そんな感じの雰囲気。

喪男が居ない時を狙って、その美人の話をしてみると明らかに素っ気ない。
「あの人好きな人が居るみたいだよ」と試しに言ってみると盗子は超食いついて
きた。
「病男くんだって。結構人気あるんだよ?
告白すればいいのに自信ないからできないんだってーもったいないね」
「そうなんだぁ…ふーん」くすりとほくそ笑む盗子。
以前見た笑い方だった。

三日と立たずに病男と仲よさ気に腕を組む盗子を目撃。
病男の首にキスマーク。
喪男とは別れたらしい。
私子はしばらく喪男に付き纏わられた。

盗子は卒業間近まで病男と付き合っていた。
ミスコン優勝間違いなしの美女の好きな男と付き合っている私が1番いい女♪
とでも思ってるのが手にとるようにわかった。
盗子とはたまにしか会わなくなってたが、たまに会うたびに、
「あの人(ミスコンの人)と鉢合わせたらまずくない?」と所々で煽ると、
盗子は満足そうに笑って、ますます燃え上がった。

卒業式の日の飲み会の後、盗子に最後の電話をした。
種明かし。

あの日見た表情のこと
喪男なんて好きじゃなかったこと
キモい男と付き合う盗子を見るのは面白かった
病男は性病もち
もちろんミスコンの人の思い人じゃない

最初は天然ぶってほわほわした返しをしていた盗子だったか、
喪男キモーイの話になると「はあっ!?」と切れた声出して怒鳴ってきた。
病男の話ではギャーギャー喚いていた。
散々罵らせた後に「これ録音してるから」と言うとぴたりと押し黙った。

「これどうしようか」と静かにいう私子。
「やめて私子ちゃん、私たち友達でしょ?
盗子は私子ちゃんを信じてるよ。今のも全部ウソなんでしょ?」
と急に涙声でぶりっ子しだす盗子。
さっきまでの罵詈雑言はどうしたって感じの・・・。


「友達の彼氏取るの大好きな女なんて友達じゃないから」
と言ったら私子への不満(ただの嫉妬)をわめきだした。
面倒だったんで切った。
即効かけてきたけど、電源落としてそのまま解約。
卒業と同時に引っ越したし、共通の友達には根回し済み。
騙されたままの友人達は罵詈雑言音声を聴いて引いてた。

盗子は病男にふぁびょって自爆して殴り飛ばされたらしい。
性病もうつされたんだとかw


「彼人気あるから嫌な噂流されてるみたいだよ、盗子みたいにもてる人って大変だよね」
と事前に言っておいたけど。
病男が性病もちヤリチンなんて結構有名だったのに、
誰一人として教えてあげなかったことに今気づいた。