中学生のときの話だ。 
同じクラスに、どう贔屓目に見ても、養護学校の方が相応しいだろ…というレベルの 
池沼がいた。担任がその母親だったんだ。 

この担任、池沼をゲロ甘く育てていたので、俺達は授業中に突然発せられる奇声や 
理解不能な感情の爆発に振り回されることになった。 
更に悲惨だったのは、週替りで「お世話係」に任命される女子だ。というのも、男子の 
言うことはまったく聞かない。 
女子ならば、ベタベタ甘えるという被害はあるものの、何とか言うことを聞くんだ。 

池沼はその頃、身長170cm、体重100kg超はあろうかという巨体、そのうえ人一倍、 
性欲に目覚めていた。 
女子に後ろから抱きつく、無理矢理キスしようとする、女子トイレに入り込んで個室を 
ノックして回る等々、母親である担任以外の目には明らかだった。 
担任は、マジでこの池沼のことを時折「天使ちゃん」と呼び、「この子は人一倍純粋に 
生まれてきただけ」と主張していた。 
何度か他の先生に訴えてみた奴もいるようだったが、担任は学年主任を務め、組合 
でもそこそこの地位だったらしく、「触らぬ神になんとやら」だったようだ。 

当時放送部だった俺には、同じクラスでテニス部の彼女がいた。 
彼女と言っても、所詮は中坊、今みたいにススんでるわけではなく、せいぜい数キロ 
遠回りしてチャリで一緒に帰るとか、地元の祭に一緒に行くとか、そんな程度だ。 
手をつないだことくらいしかなかった。 

俺のいた放送部は、当番が部活終了時間まで居残り、「部活終了時間です。校内 
に残っている生徒の皆さんは、速やかに片付けをして下校しましょう」と放送すること 
になっていた。 
テニス部は割と成績が良くて、その分練習が長く、部活終了時間の放送を聞いて、 
ようやく片付けに入るという感じだった。

冬休み前の終業式の日、俺は当番だったので、部活終了の放送をし、チャリ置き場で 
彼女のことを待っていた。 
彼女は、今週の「お世話係」にされていたので、一緒に帰る間中、愚痴をこぼしていて、 
今日もそうなるんだろうな…とかぼんやり考えていると、彼女が通用口から出てくる 
のが見えた。 

彼女はダッシュでチャリ置き場の近くまで来ると、何故か俺に背を向けて、セカセカと 
チャリにカバンを積み、背を向けたまま 
「ごめん、今日一緒に帰られへん」 
と言った。 

横顔に涙が光っているのを見て、どうしたんやと声をかけたが、彼女は無言で去ろう 
とする。背を向けたまま。 
ふっと臭いがした。嗅いだことのある臭いだ。 
青臭いような、生臭いような…。 

何の臭いか分かった瞬間、俺は走って彼女の前面に回り込んだ。 
彼女の胸元の辺りから、斜めに、濃紺のセーラー服にべっとりと、信じられないくらい 
大量の白い粘液が付着していた。 
「これどうしたんや!」彼女は「池沼君が…」とだけ、絞りだすように言うと俺を振り切って 
走り去ってしまった。 

家に電話しても、押しかけてみても、親御さんが出て「今は誰とも話したくないみたい、 
ごめんね」と言うばかり。 
ジリジリしながら年が明け、学校が始まっても、彼女は来なかった。 
「●●さんは転校しました」と、とてつもなくあっさり担任が告げた。 
帰りに彼女の家に行ってみた。ピンポン押しても反応がない。 
「●●さんなら引っ越ししたわよ? あなた娘さんのお友達?」 
買い物袋を下げたおばさんが、そう言った。

彼女と親しかった数人の女子達の話で、あの日何があったのかを知った。 
部活後、着替えを終えて、教室にカバンを取りに行った彼女に、下半身を露出したまま 
ふらっと入ってきた池沼が抱きついて押し倒し、発情期の犬みたいに腰を振っていたと 
思えば、ドバッ、と放出したのだそうだ。 
(上にのって腰を振っていただけで純潔は守られてはいた)

怒りで目の前がチカチカした。 
絶対に落とし前をつけさせてやる、と心に誓った。 

そう決心すると、かえって俺は落ち着いた。 
他の先生に訴えてもダメだったという。ならば、ダメ元で教育委員会だ。と思った。 
でもどうやって訴えるか。考えに考えた。 

そして思いついた。 
年に数回、視察で教育委員会の面々が来校する日がある。 
一番近く、そして一番都合がいい日、それは2月にある立志式の日だった。 
うちの中学では、この日が創立記念日でもあり、大事にしている。 
その日、昼食時間の校内放送は各学年代表の作文の朗読になる。 

まず、学年代表にならねばならない。 
俺は何度もトイレで吐きながら、 
「池沼君のお世話を通して、僕らが学ばねばならないこと」 
というクソみたいなタイトルの、如何にも担任が好みそうな内容の作文を書き上げた。 
今思い出しても、怒りで吐き気を催すくらいだが、これまでの担任の言動を思い出し、 
可能な限りそれにおもねった内容にした。

結果、見事に俺は学年代表として、放送枠を手に入れた。 
他の学年はテープに吹き込んだ物を流すのだが、俺は放送部員なので、 
「昼の放送やるついでに、自分で読みますわ」 
という言葉を疑う者は居なかった。 

そして決行日。 
俺は放送室の扉に中から鍵をかけた後、粘着テープを何重にも貼り付けて開きにくく 
細工し、放送を始めた。 
他の学年代表の作文なんか流しはしない。 
放送時間の全部を使って、池沼と担任の親子を糾弾する。 
学ランの内ポケットに忍ばせていた本当の原稿を取り出し、読み始める。 

すごい騒ぎになった。 
始まって十分もすると、外からガンガン扉を叩きまくりながらファビョりまくる担任の 
狂ったような声も流れ始めたそうで、応接室で校長と一緒に仕出し弁当喰ってた 
教育委員会の面々にも、ばっちり聞こえていたようだ。 

あっという間に一時間の放送時間が終わった。 
やり切った。言いたいことは全部言った。 
俺は粘着テープを剥がし、自分から鍵を開けて、放送室の外に出た。 

先生達による事情聴取みたいなものもあったが、動機から何から全部放送しちゃった 
わけで、燃え尽きた俺は「放送した通りですよ」とかテキトーに答えていたようだ。 
めっちゃくちゃ怒られたが、クラスの連中は「お前よくやったよ」と言ってくれた。 
担任は泡ふいてぶっ倒れて、病院に搬送されたらしい。 
一週間もすると、代わりの先生が来た。 
元担任が辞めたのか、飛ばされたのかは知らない。大して興味も湧かなかった。 
ただ、池沼も一緒にいなくなったので、クラス中喜んだのは確かだ。 

彼女に復讐は果たしたことを伝えられないのが、今でも時折、喉に刺さった魚の骨の 
ようにチクチクする。

池沼が嫌いなわけではない、ただなんでも許されるのはどうなんだと思う。
池沼だから他の人間と違う特別扱いなのか?
同じ人間と思うのなら一緒に扱わなければいけないのではないだろうか?

そんな事をふと思い出し俺は介護の職について、その持論を強く展開している。