15年位前の話。 

当時私は中学生だったんだけど、その頃よく校内に侵入する酔っ払いがいた。 
『ナポレオン』という銘柄の酒瓶を持っていたことから通称「ナポレオン」と呼ばれていた。 
放課後校庭に入り込んで、部活中の生徒に向かって大声で「クズ共が!」「お前らガキは社会のゴミだ!」とか叫んでるだけで大した被害はない。 
面白がってちょっかい出そうとするおバカな生徒がいたが、相手が襲い掛かってきても酔っ払いと部活で鍛えた中学生じゃ差は歴然、ナポレオンのパンチがあたった事はない。 
最初は相手をして追い返してた先生方も、だんだん放置するようになってきた。(ちょっかい出してる生徒に注意はしていた模様。) 


そんなある日、ナポレオンいつもと出没箇所をかえて、体育館にやってきた。手に包丁を持って。 
凍りつく館内、大声で何か叫んでるナポレオン。 
みんないっせいに近くの扉から脱出。
幸いにもナポレオンは追いかけてくることはなく、その場に座り込んでた。 
みんながパニくってる間に、起点の聞く子が先生を呼びに行き、部活は中止。
足止めしてるから帰りなさいと通知が出た。 

で、ここからが個人的な修羅場なんだけど、私の家とナポレオンの家は隣の集落。 
先輩と二人で帰っていると、後から聞こえる怒鳴り声。 
もしやと思い振り返ると数百メートル後に見えるナポレオン(向うも自転車。しかも結構速い。) 
先生、もう少し足止めしといてよ!!こっちは田舎の田んぼ道が主な通学路。逃げ込める民家なんてありゃしない。 
二人とも無言で自転車を漕いで帰った。 
何もなく家までたどり着いたけど、生きた心地がしなかった。 

この時ほどの修羅場じゃないけど、素っ裸のおっさんがで田んぼに嵌っていたり、”おはようございます”と爽やかに挨拶したら石投げられたりと、要注意人物がよく出没する通学路でした。