姉が家族と血のつながりが無かった。

4歳上の姉は、未熟児で生まれて生後しばらくは保育器で過ごしていた。

でも今では元気で、結婚して子供も3人産んでママさんバレーを頑張っている。

姉は母親似で、母とに同じ眉の端に黒子がある。

私は完全に父親似で、こめかみに父と同じ位置につむじがある、おかげでどんなにスタイリングしても常に7:3になる。

のんびりした父と私と、せっかちでサバサバした母と姉で仲の良い家族だったと思う。



ある日、弁護士を名乗る男性から電話があった。

姉の実の両親が姉に会いたがっているという。

温厚な父が、電話口で押し問答した挙句にとうとう電話を叩き切った。

漏れ聞こえてきた内容から推測すると産院で取り違えがあったらしい。

母も私も呆然としていたし、父は無言で寝室に篭ってしまった。

数日後、弁護士と名乗る男性が家に来た。

相手家族のDNA鑑定書?を持参していて、姉と家族の親子鑑定をさせて欲しいと言う話だった。

ちなみに、うちは家族四人全員A型。

この時点で、まだ結婚して家を出た姉には何も知らせていなかった。

母がずっと泣きどおしだったが、相手の鑑定書の子供の名前を見た瞬間泣き止んで

「この子はどんな子ですか?今何をしていますか?」

と聞いた。

変な話だけど、その時初めて私も、血の繋がった「姉」がもう一人いるんだと気がついた。

姉も自分にとっては本当の姉だけど、この「姉」も自分の姉なんだ!みたいに頭に衝撃が走った。

弁護士さんは即答せずに、言葉を濁していたのでなんとなく、「姉」が自分たち家族を拒否しているのかな?と思ってお腹の中がヒヤッと重くなった。

父は長いこと黙っていたが、

「あの子も大人なので、どうするか自分で判断する権利がある」

と姉を電話で呼んだ。

姉は話を聞いて、真っ白な顔でひたすらまばたきを繰り返して、ちょっと怖かったが

「今更親子じゃないと言われても、両親は両親だし、そちらのご夫婦を親と思うのは難しい会わない方がお互いの為だと思う」

と言った。

ただ、姉の子が遺伝子病の一種にかかっており、実両親の既往症などは知っておきたい、と言い鑑定を受けることになった。

ちなみにこの時点で、姉が本当に取り違えられた子かどうかは分かっていなかった。

同じ時期に産院にいて、取り違えられた可能性のある子供の一人だった。


結果、姉は両親の子供ではなかった。

相手の夫婦と親子である確率が98%という結果だった。

そこからが修羅場だった。

姉と取り違えられた「姉」は、数年前に病気で他界していた。

「姉」が小学生の時、病気になりその時血液型が合わないことから、夫婦の実子では無いことが判明した。

「姉」は不妊治療の末、体外受精で生まれた子供だったので夫婦ははじめ、受精の際に取り違えが起きたのだと思いそこから調査を開始した、しかし数年に及ぶ調査の結果、それが有り得ないことが分かった。

受精卵の一部?を保存していたので、受精卵の遺伝子から夫婦の物であることが証明された。

今時、赤子の取り違えの可能性などないだろうと思っていた夫婦は、そこで初めて産院に連絡。

当時未熟児で生まれた姉と、同じく早産で生まれて保育器に入っていた「姉」が同じ日に危険な状態になりほぼ同時に処置を受けており、その時に取り違えが起きたのでは?ということだった。

「姉」は自分が実子ではないことを知らないまま、他界した。

うちの両親にしてみれば、実の我が子には会えないわ実子として育てた姉は取られそうだわで、恐慌状態だったと思う。

姉の夫も交えて、相手の家で会う事になった。

すんごいお金持ちのお屋敷だった。

相手の旦那さんを見た瞬間「あ、お姉ちゃんだ」と思った、そっくりだった。

亡くなった「姉」は一人娘で、相手夫婦は姉夫婦を養子にするか姉の子供の一人を養子にしたいようだった。

姉は、相手夫婦のその希望を聞くと

「あー。やっぱりそういう事ですか」

と覚めた口調で言って2chAAの

「お断り」

みたいな態度で、相手夫婦の既往症や親族の既往症だけ聞き出すと、さっさと帰ろうとした。

相手夫婦は

「孫の治療費は惜しまない、最高の治療を受けさせるから」

とすがり奥さんが

「娘を病気で失った、長く患って苦しむの見ているしか出来なかった、助けてやれなかった実の娘にまで自分と同じ思いをさせたくない、援助させて下さい」

と号泣したときは心を動かされたようだったが旦那さんが

「娘(姉)にかかった養育費や、学費はお支払いします、娘を返してください」

と両親に言った途端母は旦那さんに紅茶をかけ、父は殴りかかり、私はクッションを投げつけ姉は

「出遅れた」

とつぶやき

「もう二度と会う事はありません、私の家族にも接触しないでください」

と言って私たちを促して、お屋敷を後にした。

その後、弁護士から数度連絡があったが、その都度断り続けていたら連絡も途絶えた。


姉と母は全く眉の同じ位置に黒子があり、顔立ちも似ているので未だに赤の他人とは思えない。

相手夫婦のどちらにも、眉周辺にほくろは無かった。

ただ旦那さんは、本当に姉そっくりだった。

でも旦那さんと母は、全く似ていない。

未だにそのへんを考えると頭の中がグルグルしてくる。


うちは親子関係無効の手続きを取るつもりは無いし姉も成人してるし、相手はどうしようも無いみたい。

でも「姉」が実子では無いと分かってから10年以上探し続けてた執念?を考えると姉にきついことを言われたからって、あっさり引き下がり過ぎかな、と不安になる。

なんにしろ、姉に向こうに行く気持ちがないみたいで、内心は安心してる。

でも姉の子供の事を考えたら、複雑な気がして安心している自分が後ろめたい。