私の実家は都心の一戸建てで古いけど結構大きい。 
私が子供の頃に両親が頑張って新築した家で、 
専業主婦の母がずっと頑管理していた。 
母はなんというか程よい人で、本物の「専業主婦」。 
だからその家も本当に住み易く、又立地の良さからも 
兄家族や私家族、親戚ももちょいちょい遊びにきていた。 


やがて父が亡くなった。母はまだ還暦そこそこだったけど、 
その頃から衰えが目立つようになってきた。目や耳、物忘れ、言葉。 
どれもたいした事は無いんだけど、今後を考えると心配だった。 
この大きな一戸建てに一人で住んで管理していくのは大変だろう。 
本人と話すと、やはり負担に感じていたようだった。 
残念ながら私家族も兄家族も他に家を構えてしまっている。 
かくなるうえは、家を売って住み替えか。そんな相談を兄にすると 
兄&兄嫁、猛反対。「実家は実家としてそこに残すべき!」という。

気持ちは解る。良い場所に温かい一戸建ての実家って、良いよね。 
でもそれは母が管理してこそ成り立つ実家であって、 
本人が体力的にもう無理で、サポートも出来ないようなら 
「素敵な実家」だって存在し得ないんだよ。荒れ果てちゃうよ。 
何度もそう説明したけど解ってもらえなかった。 
今の実家の状態が未来永劫続くと信じて疑わないようだった。 
兄夫婦は親戚を味方につけて、私が母を唆していると吹聴。 
母は何度も皆に説明してくれたけど、自分が衰えているっていうのを 
説明するのって、辛いよね。辛い思いをさせてしまった。 
兄夫婦&親戚は、母はこの家を売って素敵なマンションに引っ越し、 
浮かれた老後を過ごそうとしている、私がそれを手引きしていると 
思っているようだった。怠け者みたいに言われたし。 
真面目一筋のプロ専業主婦は母としては 
そんな言われ方は耐えられない屈辱だったと思う。


母がいてこそのあの素敵な家なのだ、と何度も言うと、兄嫁が反論。 
家を維持するのは主婦として当然で威張る程の事ではない。 
誰でも出来る私でも出来るわと。誰でも出来る事をやっただけで 
やれ頑張ったの大変だのって、ちょっとのぼせあがってるんじゃ 
ないですか、と。母の努力を否定されて私もキレた。 
誰でも出来るって言うけど、兄の家はここみたいに住み易くないよと言うと、 
それは家の違いだと。ここみたいに良い家だったら簡単だって言う。 
そこで母が、じゃあお兄ちゃん達がここに住む…?と提案。 
兄夫婦はそこまでは思っていなかったようでびっくりしていたけど、 
(兄夫婦も親戚も、単に便利で居心地良い家が無くなって欲しくなかっただけ) 
考えた末にお得だと判断したようで、実家には兄夫婦が住む事になった。 
そしたら兄嫁、当然のように「オカアサンはどこに住むんですか?」だって。 
「ご自分で言い出した事ですし。」と。なんでそんなに追いつめるんだろ。 
私の家は結構郊外なんだけど、その分広いので母と同居する事にした。 
子供は母が好きなので喜んでいたが、夫には申し訳ないと頭を下げた。 
けど兄夫婦のやり方には夫もキレていたので、大丈夫!と言ってくれた。 
親戚一同も、一件落着~田舎隠居おめでとう!みたいな感じだった。 

それから一年経たないうちに結果が出た。 
実家は物凄く居心地が悪い住み辛い家になってしまった。庭もぼうぼう。 
元々古い家だから手入れが大変なのに、「専業主婦の」兄嫁はそれを怠った。 
漂っていた温かい空気もすっかり無くなり、なんか殺風景な暗い家に。 
親戚からもそう言われるようで、兄夫婦はなんで?なんで?状態。 
郊外から都心の学校に転校した兄の子供達は浮かれて荒れてしまった。

一方うちは、びっくりするくらい住み易い家になった。 
私がフルタイムの会社員なのでそもそも家事は手抜きだったんだけど、 
それでも「一体、何が違うんだ!?」ってくらい温かい良い家に変貌。 
これが本物の専業主婦パワーか…すげえ…!って家族でビックリ 
すると今度は親戚達がこっちに集まりたがるように。 
なので「ご招待していません」って断っている。ここは私家族の家だもんね。 
兄はようやく私が言っていた「母がいてこそ保てていた実家」の意味が 
理解できたらしく兄嫁と一緒に「お母さんと同居できないか」と言ってきたので 
「母を家政婦代わりにするのか」「当たり前のように追い出したでしょ」 
と言うと、もごもご言っていた。仕方ないとか自分は悪くない的な。 
それでも兄嫁は、いずれ都心の土地が貰えるんだからとフフン顔だった。 

ここからが母のDQN返しなんだけど、実はあの土地は定期借地権だった。 
あと15年くらいで国だか自治体だかに返す土地らしい。 
だからあんな一等地にでかい一戸建てが建てられたのか!!と納得。 
今の所名義替えなどはしていなくて、母名義のまま。いずれ兄に書き換えるけど、 
その時に全て解るだろう。家屋の権利はあるけどもうそんな価値無いしね。 
父と母は、現金や金でひっそり財産を貯めていたそうだ。 
やがて無くなる土地家屋だと解っていたから、子供のどちらにも最初から 
同居や処分を頼まず、現金で老後ホームに入るという計画だったらしい。 
全然知らなかった。私達の結婚に不利になるかもと隠し通していたそうだ。 
兄夫婦がこれを知るときは修羅場だと思うけど、母はその返しも用意してあるそうだ。 

子供達は母を座敷童のような存在だと思って懐いているけど、 
私は実母のずる賢さを目の当たりにしてビビった。 
おっとりして見えてもモノホンの主婦を敵に回してはいけないんだな。