俺 27歳
彼女 25歳
メンヘラ子 37歳

仕事の都合で神奈川に転勤になって、彼女と遠恋になった。
検査課だから女性が多かったけど、測定機なんかの大型の検査は男がやってて、
俺も一年の研修期間で測定機の使い方をマスターすることになってた。

先輩は40代、50代だったから、若いってだけで結構ちやほやっつーか、良くしてもらってはいた。
で、からかわれてんのかマジに言い寄られてんのかは解らんけど、結構告白もされた。
研修は一年だし、研修の結果次第では神奈川に残る可能性もあるとか言われてたけど、正直都会は合わないし。
何より彼女が向こうに居るんで、勿論即お断りしてた。
彼女を置いてきてるから云々って言ったら、どんな彼女とか聞かれそうだな、面倒くさいなーと思ってたんで、
彼女の事は匂わせずに断ってた。

そしたら、何故か俺がメンヘラ子と付き合ってることになってた。

ここからは聞いた話なんだが、女性陣の間で「あんなに頑なに断るのは彼女が居るからじゃない?」って話になってたらしい。
そこで何故かメンヘラ子が名乗りを挙げる。
「彼ったら、ワタシの為に断ってくれてたなんて…(ぽっ」
(曰わく、女性陣の間に「え、私こんなのに負けたの?」と衝撃が走ったらしい)
それでも、「多少物事を誇張して話す癖がある」と思われてはいたが、そこまで病んでるとは思われていなかったメンヘラ子。
結構デートの妄想もリアリティに満ちてたらしく、釈然としないながらも女性陣は受け入れていたらしい。
加えて俺が休日ほとんど出歩かず、出ても里帰りくらいだったせいで、妄想に拍車+真実味を帯びていたそうな。

そんなある日、先輩(♂)から見合いの話を持ち掛けられた。
仕方がないので彼女が向こうに居ることを正直に話してお断りしたんだが…
それがどう廻り廻ったのか解らんが、ある日二人の同僚に付き添われたメンヘラ子が泣きながら俺の前に立った。


付き添いの二人は「メンヘラ子ちゃんがいるのにひどいと思わないの!?」「メンヘラ子ちゃん、かわいそう…」と肩を怒らせている。
二人に庇われる格好のメンヘラ子はぐずりながら、「いいの、ワタシが悪いの…」なんて言ってる。

俺、ぽかーん( ゚д゚)よ。文字通り。

どうやら知らない間に「メンヘラ子を袖にして、部長の娘と付き合い始めた」ことになってたらしい。
その時になって初めて、自分がメンヘラ子と付き合ってることになっていたことを知った。
そういや確かに告白アタックが減ったけど、てっきり皆もう俺に興味なくしただけだと思ってたよ。
いや、部長じゃなくて係長だし。娘じゃなくて姪っ子だって話だし。そもそも断ったし。
っつーか俺の相手メンヘラ子ってどんな罰ゲームだよwwwww

さすがにちょっと吹き出しながら、彼女が居ることと、見合いは断ったことを説明すると、付き添いの二人が沈黙。
メンヘラ子のみ慌てながら、涙と鼻水垂らして「先週あんなに愛してるって言ってくれたのは嘘だったの!?」って言うから、
その日の航空券見せたらさすがに押し黙った。
成田発福岡着。翌日の日付で福岡発成田着。
付き添いの二人がメンヘラ子を白い目で見ながら、俺に謝ってくる。
メンヘラ子は「ワタシを陥れる罠だ!そんなにワタシが憎いの!?」とか喚いてる。
ともあれメンヘラ子の正体は露呈し、誤解は解け、俺は一年の研修期間を終えて地元に帰った……
で終わればハッピーエンドだったんだが。

その日は車を車検に出してて。代車でも良かったんだが、彼女が送り迎えしてくれることになった。
で、仕事を終えて彼女の車に乗った瞬間、たまたま開けてた運転席の窓から、ガッと手が差し込まれた。
「は!?」とか思ったら、そこには般若の形相のメンヘラ子。
「○○クン(俺)にはあんたみたいなビッチ、相応しくないのよ!!!!!」
とか言って、彼女の首を絞め始める。
メンヘラ子の話はしといたけど、それどころじゃない。
振りほどこうにもめちゃくちゃ力が強い。窓を閉めることは頭に浮かばず、咄嗟にクラクションを鳴らしまくった。
幸い社内駐車場で、すぐに人が集まってメンヘラ子を取り押さえたけど、
バッグから刃物が覗いててゾッとしたわ。
メンヘラ子、俺がこっち戻ってすぐ、無断欠勤が続いてクビになってたんだと。
で、俺を追っかけてこっちに来て、仕事探す傍ら俺のストーキングしてた、と。
支社の場所なんて調べりゃすぐだからな。
支社から退勤する俺を追いかけて自宅を把握。郵便物とか洗濯物も盗んだらしい。
全然気づいてなかったけど。
そうして彼女に対して「何よあの女!!」となって、凶行に至る、と。
彼女に対してのストーキングが無かったのは病んでたからなのか、知らない内に惨事にならなくて良かったとは思う。
その後は示談だなんだと色々あったけど、その辺は割愛。
そんなことがあっても見捨てないでいてくれた彼女に感謝。
メンヘラ子は、風の噂で両親が福島に引っ越して、メンヘラ子を引き連れていったという話だが、真偽のほどは不明。