小学校高学年のころの可愛らしい話をひとつ。

母親同士が今で言うママ友だったつながりで、数人の女の子で仲良しグループを作ってた。


最初のうちはあてがわれた友達で仲良く遊べたんだけど、成長とともに合う合わないがどうしても出てくる。

また私の母親は気の弱い人で、何かあったとき文句を言うどころか不当な扱いに抗議することもできない、そんなタイプだった。

そういう母親同士の関係はやはり子供同士にも影響を及ぼすもので、ボスタイプのA母の子(以下A子)は地元企業の社長令嬢という立場もあって強い存在感を持っていた。

目立った虐めはなかったけど、いつもおしゃれな格好をしてるA子が兄のお下がり着てる子のことをpgrしたり

TVは一日30分までと決められてた私を「TVの話にも乗れない、ノリが悪くて暗いヤツ」呼ばわりしたり

流行のものを買ってもらえない子が加われない遊びばっかりしたがったり、そういうことがちょくちょくあった。

ちょっと嫌だな、と思いつつも母親同士が仲良くて言い出せないまま学年が上がっていった。

そして母親同士で成績のことが話題になったのか、あるとき全員で近所の学習塾に入れられた。


その塾がかなり厳しくて、塾長兼講師が一人で全科目教える個人塾。

毎時間テストを行い上位3位は図書券のご褒美がもらえるが、理解が遅かったり成績が伸びないと先生から「氏ね」といわれたりするようなところだった。

今だったら相当問題になるだろうけれど、ついていけなくてやめる子も多い反面、図書券のご褒美につられたり、競い合いに向いている子はグンと成績を伸ばすところだったので広い学区から人がきていた。

私たちのグループは平均値が上の中だったけれど、ある日私は算数の一部でなかなか理解できないポイントがあり「氏ね」と皆の前で罵られた。

その日の帰り道は泣くのを我慢している私に、皆腫れ物に触るような感じだった。

そんな中A子は「えー私でもわかったのにぃ」とpgrした。悔しかった。

それから予習復習を徹底的にした。

苦手だった部分も克服し、他の子の発案で皆で予習してから塾へ行くようにした。

成績上位者をグループが占めることも出てきた。

そんな中A子はあまり予習に熱心ではなく、成績は伸び悩み始めた。


ある日のテスト中斜め後ろからA子の視線を感じた。

カンニングだ。

見つかればあの先生のことだ、ただではすまない。

まさかと思いながら答え合わせのときに確信した。

こいつ私の答案を見てやがる。

A子から見える位置の問題は私とそっくり同じ計算式と回答で、見えない場所は関連問題やもっと易しい問いなのに不自然に空いていた。

今までpgrしてきた私の答案見るのかよふざけんな、と思ったけれどももしかしたら魔がさしただけかもしれない。

それに発言力の強いA子に、話し下手の私が食って掛かったところでとぼけられたら終わりだ。

次の日もA子は私の答案を見た。

座席は毎日変わる。

その日は隣同士になり、肘で答案を隠すようにしていたらさりげなく私の肘をどかすように押してきた。

とても嫌だったけれど、その日も何も言えずに終わった。

私は計画を練り始めた。


その次の週、A子の苦手な算数の文章問題が出た。

「時速○kmで走っている電車が×分走ると」
「AとBの電車がすれ違うと」というあれだ。

私はさりげなく、斜め後ろのA子に答案が見えるようにしてやった。

A子が先生の目を盗んでガン見している気配が伝わってきた。

もちろん私が書いた計算式はでたらめで、割り出した速度は「マイナス○○km」というどう計算してもでてこないありえない数字。

なので少しでも自分で考えればこの答えは違うということはわかる。

残り時間があと2分となったときに、見直しをするふりをしながら大急ぎで答案を全部正しいものに書き直した。

何が味方したのか、いつも解説の際ランダムに答えさせる先生が今日に限ってA子に答えさせた。

A子「答えはマイナス○○kmです」

ざわつく教室。

そりゃそうだ、ありえない数字なんだもん。

この教室でそんな答えを出したのはA子ひとり。
先生の顔が険しくなる。

「あぁ?どうしてそうなったのか言ってみろ!」

「え……」

答えられないA子。

私作のでたらめ計算式を蚊の鳴くような声で言う。

よく聞こえないと身を乗り出す教室の子達。

「なんだそれは、脳みそのどこ使ってんだ!馬鹿かお前は!なんでそんな数字つかうんだ!?」

「わ……わかりませ……」

わからないって何だよ、自分で解いたんだろとpgrする他校の子達。容赦ない。

A子はそうとうきつく怒られていたはずなんだけど、どうやってA子が言い訳したかは覚えていない。

でも最後に先生が「上位誰だ?満点は……、お前一人か。よくやった」って私に図書券をくれたときA子が「えっ」って言ったのは覚えてる。

めちゃくちゃ気持ちよかった。

私はA子に何も言わなかったし、A子も何も言わなかった。

ただA子が私をpgrすることはなくなり、まじめに予習をするようになり私はそれで満足した。

復讐というには小さいですが、母親同士の人間関係に影響されてた私には結構勇気の居る行動でした。