初めて付き合った彼は、自分は男臭いくらいの不器用で無骨な、
でも頼りになるステキなオレ、みたいなつもりだったらしい。
現実はねちょねちょしたマザコンで、ケチで物知らずで子供っぽかったけど。

一人暮らしだった私の家に入り浸り、あるものみんな食べちゃう、汚す、私物持ち込む、
私の時間を全て拘束し、だからって楽しい用事があるわけでもなく、寝てるだけ。
指摘するとすぐ泣くのも定番。
たまのデートは彼の仕事関係のところを回らされ、費用は折半。
私を遠くまで呼び出しといて、日曜6時には「ママとご飯たべなきゃ」と急いで帰る。
なのに何故か無頼派で頼れるオレ像は揺るがない。


初めて付き合った人だからなんか別れることもできなかったけど、 あの一言で決定的に醒めた。

「この世には四人の天才がいる。 B'zの二人、そしてビートルズの二人だ。」

言いたいことはいろいろあったけど、頑張って距離を置いた。
最後に別れたとき、背後から

「今でも好きだあああ!」

と絶叫された。
帰ったら、留守電に

「交通費貸してくれ」

と入ってた。
なんでその人と付き合ってたのか、どうしても思い出せない。