私…20歳。仕事歴2年目。
A男…20歳。新卒。
友子・友男…20歳。新卒。他部署。

派遣でとある仕事に就いてから2年程経った頃、異動した先の営業所でA男という男の子と出会った。

私は高卒で今の仕事に就いていて、A男は短大卒の新入社員だったから、仕事歴は違うけど同い年。
明るくて誰にでも超フレンドリーなA男。毎日愚痴を言いながらも仕事は真面目。
上司にも先輩にも可愛がられていて、同い年の男子に苦手意識をもっていた私もA男とはすぐに打ち解けられた。
更にA男と同期で同い年の友子、友男ともA男の伝で仲良くなって、4人でお昼食べたり飲みに行ったり、毎日すごく楽しかった。

色々おかしくなった切欠は、A男の学生時代からの彼女の浮気が発覚したこと。
浮気した彼女の方が「仕事仕事って寂しい思いをさせるのが悪い!」「最低!」と泣いてA男を罵り倒して大変だったらしい。
話しながらへこみまくっているA男にどんな言葉を掛ければいいかわからずにいる私に対して、
「情けないけど、私子に聞いてもらったら楽になった」
と、A男の方が明るく言ってくれて一安心。また友子と友男と飲み会やろう!なんて気楽に話をしてた。

だけどこの翌日から、A男が拒食症・不眠症をアピールし始める。
ちょっとでも食べた方がいい、眠れなくても横になって体を休めろ、と心配しても、
「いいんだよ俺なんか…」「なんかもう死にたい…なんてな」とか言うようになってA男への接し方がわからなくなる私友子友男。


少し距離を置くようにしようかな、と考え始めたところで、私はあることに気付いた。
A男を可愛がっていた先輩と上司の態度がおかしい。
自分もA男を心配してた時は気にしなかったけど、やたら私にA男の話題を振ってくるし、A男と一緒に行動させようとする。

腹が立ったのは、社員しか出来ない承認をA男の先輩に持って行ったとき、
「私子はA男に貰わないとダメじゃん~」
とニヤニヤ顔で言われたこと。何あれ!と怒る私に対してA男もまんざらじゃない感じで「気遣ってくれてんだよ。私子は俺に承認貰いにくればいいよ」とか言う。

仕事とそういうの一緒にしてんじゃねーよとこの時点でA男にも男性陣にもムカムカしてたのに加えて、とどめに上司が
「なんでA男と付き合ってやらないの?」
「A男落ち込んでるよ」
とか言ってくるから我慢の限界を迎えて、その日友男と帰ろうとしていた友子を捕まえて話を聞いてもらう事にした。
うちの部署の男性陣はおかしい!A男もおかしい!と怒りのままに吼える私に友子が何かを察したらしく、
「これ友男に聞いたんだけどね…」と友子が知ってる事情を話してくれた。

A男は元彼女と別れる前後から「私子と付き合いたい」と友男に言ってたみたいで、お酒が入ると「私子が好きだ。寂しい。ヤりたい」みたいなことも口走っていたらしい。
他にも、昔4人で飲みに行った時に友子友男とはぐれて私子を襲えば良かったとか、そうなれる雰囲気作りに協力してくれ、っていうようなことも言ってて、
「お前絶対それ俺以外に言うなよ」って友男は釘を刺しててくれたらしい。
でもその様子だと私の部署内の男性陣はA男のその話を聞いて、面白おかしくA男に協力しようとしてるんだろうってことだった。

もう泣くほど腹が立って気持ち悪くてどうにもやりきれなかったので、迷った挙句仕事を辞めることに決めた。
「私子が辞めたらA男が…」とか上司が言ってて、どんだけA男上司や先輩に好かれてんだ、とちょっと悲しくなった。

が、悲しくなってる暇なんてなかった。
私が辞めるって話を上司にした翌日から、A男の態度ががらりと変わった。
元々仕事以外で話すことは殆どなくなっていたんだけど、仕事の上の対応がおかしい。
なんか不機嫌そうにしているのはわかるんだけど、私を避けるわけではなくて、ちょっとわかりにくいかもだけど
喩えば書類の承認をやるやるって言いながら後回しにしたり、回覧の書類を「俺が私子に回します」と言ってずっと持っていたり、
とにかく私がA男に確認をしに行かなきゃいけないことが増えた。
最初は嫌がらせかと思ったんだけど、確認に行って「困ります、すぐやってください」って言うとやってくれる。

もうどんな意図があるにせよ、ここまで来て仕事にそういうのを持ち込むのに苛々してたんだけど。

ある日ついにそれが頂点を迎える時が来た。

もう何の仕事だったかも忘れたけど、部署のすみの机でA男と二人で仕事をしてた時のこと。A男が突然小さな話し始めた。

A男「俺さ…私子のこと怒ってるわけじゃないんだよ」
私「は?」
A男「避けられたりして辛かったけど…まあ別にそれは…辛かったけどさ、もういいんだ」
私「いやそれ…A男のせいだから…」
A男「うん、だからもういいんだって。友子と友男とばっかり仲良くしてたことも、怒ってないよ。」
私「……」
A男「それにここ最近のことも、別にお前が辞めることに怒ってるわけじゃないんだ。
   ただ、なんで上司さんに先に相談してんだって思っただけ。なんで俺が一番最初じゃないんだって悔しかった。
   だから上司さんには怒ってるけどね。辛かったけど、お前には怒ってないから、もう普段どおり接してくれて良いよ」

怒ってるとか怒ってないとか、上司云々とかもうA男の言ってることが意味わからなすぎた。
その後もなんかA男が10分くらい話をしてて、最後に、「私子、言いたいことある?」と言ってきたので
「ふざけんな!全部あんただから!あんたのせいだから!ふざけんな!」
みたいなことを部署に響き渡る大きい声で言った。

連日のストレスで頭も回らなくなっていたんだ。
大きい声を出したと気付いた時には時既に遅しで、A男はぽかーんとしてるしなんだなんだと人が集まってきてしまった。
思い当たる節があったのかA男の先輩がいち早く駆けつけてきて、何故か私が怒られる。

「そもそもお前が~」みたいな感じのことを言われてたけどなんかもう頭に入ってこなくて、悔しくて心臓の辺りが痛くてぼたぼた泣いてたら
「A男もアンタ(先輩)もいい加減にしろ!!」って友子が割って入ってくれた。
「お前らちょっとひどすぎだよ、私子に謝れ」って今までA男の味方ばっかりしてた友男も加勢してくれて、何も言えずにいる私に代わって
二人がA男と先輩(主に先輩)と口論してくれた。

最終的に騒ぎを聞きつけたうちの部署の上司と、友子友男の部署の上司が皆を散らして話を聞いてくれた。
そしたら今までめちゃくちゃ怖い人だと思ってた友子友男部署の上司が、うちの部署の上司を叱り飛ばしてくれた。
もともと見て見ぬフリが多すぎたうちの上司。好き勝手やってた先輩も勿論A男も後で友子友男の上司がガツンとやってくれた。

その後何を話したわけではないけど、A男は仕事だけはちゃんとこなしてくれるようになった。
それ以外では頑なに無視し続けて、結局そのままその仕事は辞めて、一ヶ月ほど体を休めました。
今では別の仕事に無事転職して、仕事を辞めて暫くA男からメールがあったけど、今ではもう全く音沙汰がないです。

そしてこの度友子と友男が結婚することになりました。
私とA男のことで相談する内に仲良くなってこの修羅場の途中にはこっそり付き合い始めていたというw