私は当時社会人になったばかり。
彼は院生。

彼が院生になってから知り合った後輩に、A子(私とは面識なし)という子がいました。

A子は人付き合いが上手ではなく、親との関係もあまり良くなく
女友達ができにくい性格だとかで悩みが多く、なぜか私の彼に毎晩相談メールを
送ってくるようになりました。

そのメールがまた長文で、彼が読むのに十数分。
返事を打って送るのに三十分。そしてまた二十分ほどしたら再メールが…
の繰り返し。
私が部屋にいてもずーっと携帯いじりっぱなし。
いい加減いやになったので「私と会ってる時だけでもメールはやめて」と言ったが
彼は「A子は悩んでるんだよ」「困ってる子を突き放せない」
「他に頼れる人もいないみたいだし、かわいそうじゃないか」
と言って聞いてくれませんでした。

そのうちA子はメールだけではなく電話してくるようになり、
電話したら何時間もずっと話しっぱなし。
私はほったらかしで、せっかく作ったご飯も片手でちょこちょこつまむ程度で
電話を手放そうとしない彼。
たまりかねて「もう帰る」と立ち上がると、片手でしっしっという感じでバイバイされた。
さすがに腹が立ってくやしくて、泣きながら帰った。

帰ってからお風呂に入って深呼吸して、
「あなたの優先順位が知りたい。あなたの中で今、最優先なのは私ではなく
A子なのですか?」とメールしてみた。
返事が来たのは翌日の昼間で、
「俺が付き合ってるのはお前。でもお前は今困ってない。困ってる人を優先するのは当然。
なにか勘違いしてるようだがA子と俺は何でもない。
そんなつもりでA子の面倒をみてるわけじゃない。汚い想像はするな。
お前の女を下げるだけだ」
という内容でした。


なんか彼の言いたいことはわかるんだけど、私の言いたいこととは噛み合ってない…。
そう思ってちゃんと面と向かって話そうと、その夜も彼の家に行ったが
やっぱりA子からのメールと電話攻撃でまったく話せず、合間に話しても平行線。

あいかわらずA子は
「どこへ行ってもうまくいかない。バイト先でも何もしてないのにハブられた。
女の子たちはみんな私に反感を持つ。うまくやっていきたいのに」
こんな感じの相談ばかりらしく、彼氏はひたすら
「A子が一生懸命やってればみんないずれわかってくれるよ。がんばれ。
ハブってくる先輩なんかこっちが見返してやれ。そいつより仕事ができるようになればいいんだ」
などと熱く励ましていました。


それを横でぼーっと見てたらだんだん「こいつらよーやるなあ…ついていけないかも」
という気持ちが湧いてきて、帰るチャンスをうかがっていると
彼が急に「これから?!え? それはちょっとダメだよ」
と私をチラっと振り返りました。
どうやらA子が今から会いたい、みたいなことを行ってる様子。

彼「いや、今はホント、ダメなんだって…。友達来てるし、今はまずい」
(A子がごねてる)
彼「こないだは友達来てなかったから、よかったけど…。いや、もうメシも済んだし。今日はちょっと」
(A子さらにごねる)
彼「うーん…」
私をまたチラっと見て
「A子、来たいんだって。いい?」

何が「いい?」だよ。とさすがにイラっときた。
「勝手にすれば?帰る」と立ち上がると
「え~…いいの?俺とA子、二人きりになっちゃうよ?」と彼、なぜかヘラヘラしてる。
私「さっきの話だとこの部屋に入れるのも初めてじゃないみたいだし、そんなの今さらじゃない?」
彼「え?何おまえ、人の電話に聞き耳立ててたの?サイテーだな。最低だよそれって」
私「なに言ってんの?目の前で話してるんだからそりゃ勝手に耳に入ってくるでしょ」
彼「聞こえないふりするのがマナーってもんだろ。あーあ、盗み聞きするような女だと思わなかったよ。
騙されてた、俺、騙されてたなあ(急に大声)。A子の方がいい女かもなあ!」
私「…もう帰るわ」

待てよ!と腕を捕まれたけど、振り払った。玄関先で靴をはこうと手まどってたら、
後ろから肩を押されて前に倒れ、膝をついたらすりむいて血が出ました。
私が肩越しに睨むと彼はビクっとなったようだけど、
まだ何か言いたげだったので、靴は手に持って、そのまま走って部屋を出ました。

その後彼からガンガンメールが来たけど全部無視して、届いたそばから削除した。
共通の友達B子とC男に「こういういきさつで別れるかも」と言うと
「確かにあいつ、最近のぼせあがって人が変わっちゃってるよな…」
「別れたくなってもそれ、しょうがないかも…」
と二人ともため息をついていた。

後日、彼の部屋に置きっぱなしだった私物を引き上げようと、彼の部屋へ行った。
別れ話もちゃんとしたかったし。
事前にちゃんとアポとって「九時に行くから」って言ってあったのに
なんとドアあけたら彼だけじゃなく、女の子もいた。
はじめて会ったけどたぶんA子。
手首に包帯巻いてる。リスカ? 
…そして私の服、勝手に着てる…。

「二人きりで話せないなら帰る」と言うと彼氏が追いかけてきて腕を掴み、
「お前だけの一方的な話だとフェアじゃないから」
と言う。
は?私は一人であんたたち二人の方がアンフェアじゃない?と思ったが
怒りとムカつきで咄嗟に言葉が出てこなくて、立ちすくんでしまった。
そしたら彼がなぜかA子を振り返って、私のヒザの絆創膏を指差し
「見ろよあのヒザ。あれ、こないだ俺がこいつにやったんだ。いくら口は達者でも、女なんて
ちょっと突き飛ばしただけで怪我するんだから、全然怖くないって」
と笑った。
A子も彼に同調して「彼さんすごーい」みたいなことを言った。

何こいつら、と心底気持ち悪くなって、
「二人で勝手にやって。もう私やってられない。あんたとは別れる。荷物はあとでB子と取りに来る」
と言った。彼氏は「別れるってなんだよ!」と言いかけたけど
A子が後ろで「別れるんだ~彼さんよかったですね!別れたいって言ってたもんね!」と。
彼氏はA子の手前、引っ込みがつかなくなったみたいで
あうあう言ってたから、その間に私は携帯をバッグから出した。

私「別れたい」
彼「えー、あー、うー」
A子「彼さん、どうしたの~?」
私「……」
A子「彼さ~ん」
彼「わかったよ、さっさと出てけ!ブス!」
私「別れるよね?」
彼「別れるよ!」

携帯突き出して「録音したから。どうもありがと」と言って彼に背中向けて帰ろうとしたら
気配感じたから、バっ!と振り返った。

まさに彼氏が今、両手突き出して私を階段から押そうとしてるとこだった。
目が合って固まってる彼に
「キャーーーッ!何するのーーーーっ!」って叫んでやったら
真っ青になって部屋に駆け込んでいった。

その後、共通の友人たちに「別れました」と報告メールして
彼の部屋の荷物はB子とB子彼とC男と一緒に来てもらって回収した。
彼氏は小声でぶつぶつ言ってたけど、男性二人がいるので表立っては何もできないようで
おとなしかったです。
私は実家住まいだし、彼は実家凸なんかできないチキン。
携帯は着信拒否して、職場は住所バレてないから問題なし。

彼はその後仲間内に私のことを愚痴りまくったらしい。
でも誰も彼の味方はせず、
先輩の一人に
「私子に謝れ、頭下げてよりを戻してもらえ」と説教されても
何が悪かったのかさっぱりわかってない様子だったそうです。

そして彼の話を聞いてくれるのはA子だけという有様に。
しかしA子が欲しかったのは「A子の話しを際限なく聞いてよしよししてくれる人」であって
「A子に際限なく愚痴って依存してくる男」
ではないわけです。
A子はしばらく彼の家に転がり込んでたけど
家事しない、ちらかす、三食外食、彼が愚痴るとキレる、
彼が言い返すとリスカする、の繰り返しで、そのうち別の「相談男」を見つけて
去っていったそうです。

A子が去ってすぐ、知らないアドレスから
泣きのメールが大量に届きました。もちろん送信者は彼。というか元彼。

本当に大切なものを見失ってたとか
お前は強いからすこしくらいほっといても平気だと思ってたとか
そばにいてあたりまえの空気のような存在になってたとか
もう一度だけチャンスをくれとか色々書いてあった。

「ヒザはもう大丈夫?男の怖さを思い知らせてしまったな…ゴメン」
という一文がとても気持ち悪くていまだに覚えてます。

しばらくメールがうるさかったけど
先輩の一人に相談して説教してもらってから平和になりました。

人づてに聞くところではすっかりもとのおとなしい彼に戻っているそうですが
いつまたスイッチ入って豹変するかわからないと
評判が広まってしまい誰も近づかないそうです。
A子の行方はわかりません。